あなたのことが好きなんです



 雅やんの表情の顔っていうのは、喜怒哀楽にとぼしい。地顔が山ちゃんとは正反対でぶすっとした顔だから、オレらが一年の時はよく先輩やら他校生やらに「ケンカ売ってんのか?」って言われ てたっけ。多分、ガン飛ばしてるように見えてんだろう。
 それだって、よぉっくみてると、微細な動きはする。鉄面皮ってわけじゃないんだな。でも、あれだ。 絶対に、ソンだよ。だって、楽しかったり、嬉しかったりする時よりも怒った時の顔の動きが一番大き く感情が顔に出るんだもんな。そんでもって、照れたりしてる時は、殆ど顔が変らない。むしろ、照れをごまかすためにぶっきらぼうな感じになるから、マジで損。
 でも、その反面、ストイックな感じで試合中とかはマジカッコイイ顔してるんだよ。試合中は、恐いく らいのその顔がカッコイイ。で、オレはそれを雅やんに言ってみた。
「雅やん、試合中とか、マジ顔がカッコイイ。惚れそう」
「・・・」
 雅やんはぎょっとして、白目を剥いて目を大きく見開いた。そして、ぱちぱちと何回も瞬きをしていた 。
これって、雅やんが驚いた時の顔か?そんな表情はじめて見たけど。
「こりゃ驚いた。雅やん・・・驚くと、可愛いのな。オレ、そんな顔も好きだよ」
 正直な言葉が口からぽろっと出たら、すんごいむすっとした顔になった。愛想が全くない顔。
 これ、照れてるんだ。オレにはわかっちゃうんだよな。それほどまでに、オレはキミを見ていたって わけですよ。
「バカヤロウ」
 うん、オレは馬鹿だよ。雅やん馬鹿。
 だから、それはホメコトバとして受け取っておこう。

END

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