その後どれくらいたった頃だったのか?30分ちょいくらいか?しばらくして、部屋の扉がノックされて開いた。
 おばさんがお茶とお菓子を持ってきてくれたんだ。三橋んちで出してくれる菓子は美味いんだよな。三橋が喰うのが好きなわけが判るような気がする。
「あ、ありがとうございます」
 軽く頭を下げると、おばさんがにっこり笑って「こっちこそ。ゆっくりしていって。よければ夕飯も食べていかない?」と言ってくれた。そこまでしてもらうんじゃ、流石に悪いと思って断った。
 おばさんはエンリョしないでと言ってさらに勧めてきたけど、三橋のベッドを見てすぐに赤くなった。そして、三橋に文句言いながらベットの上にちらかっているゴミを拾い始める。
 最後に、机の上に置いてあった茶色いビンを見つけて首をかしげた。


DRUG DROP 3



「廉、これ・・・どうしたの?」
「買った。今日の帰りに、薬局で」
 もしかして、三橋はこれを買うためにオレを置いて先に帰ったのか?
「あんた、大丈夫なの?こんなの飲んで?」
 おばさんが心配そうにビンを取り上げて、成分表示を読んでいる。なんだ、そんなに心配するようなもんなのか?
 だってそれ、市販の眠気覚ましの気付け薬だろ?コイツに受験の時に世話になったヤツが結構いる。水谷なんかは未だに試験前はこれを飲んで勉強してるらしい。飲みすぎると、頭が変になるって話はきいたことあるけど、嘘か真かはわかんねぇ。オレは飲んだことねぇかんな。でも、あのクソレが飲んでるっつーことはかなり信憑性がある。だって、あいつの頭のおかしさは尋常じゃねぇもん。
「廉、こんなの飲んじゃ駄目だからね」
 おばさんが異様に厳しい顔で言った。オレも三橋の頭が水谷みたいにパーになったら困るけど、連続服用するわけじゃねぇし、そこまで強く言う必要あんのか?
 でも、三橋もきかなかった。
「大丈夫、だよ!」
「廉・・・」
「・・・水谷君がそれ飲むと眠くならないって言ってた。それに、今ちゃんと頑張るから、た、多分使わない、よ」
 こんなどうでもいいようなことで、三橋が物を言うなんて珍しいもんだ。
 それにしても、この眠気覚ましを三橋に勧めたのはやっぱ水谷だったか・・・なんか、嫌な感じだ。アイツがすることは、いつもろくでもねぇ。
「そこまでいうなら、お母さんなにも言わないけど・・・。それ飲まなくていいように頑張りなさいよ。阿部君、よろしくね」
 そう言っておばさんはゴミを片手に部屋を出て行った。
 そして、オレがおばさんの後姿を見送りながら感じた「嫌な予感」は的中することになる。
 けど、その時のオレがクソレ推奨の眠気覚ましのせいであんなとんでもないメにあうなんてこと、当然ながら知る由もなかったんだ。

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