September Festival Blue




 あーぁ、なんだかなぁ。
西浦に来て、二回目の文化祭を泉と一緒のクラスで過ごすことになるなんて思わなかったよなぁ。
なんの因果なんだろう・・・。
「じゃあ、やりたい出し物に挙手してください…浜田くん、ちゃんと参加して下さいね!」
うおっ!な、なんだ、なんだ!?
「へ、あ…ハイ!」
急に呼ばれて、びびっちまったオレはとりあえず返事した。
だって、学級委員長がめちゃめちゃ睨んでんだもん…。
素直に返事をしたからか、それともオレがびびった姿に溜飲さげたのか委員長はそれ以上なにも言わずに、黒板に大きく白いチョークで「1年9組文化祭の出し物」と書いた。
オレが肩を竦めて小さくなると周りが、クスクス笑っていた。隣の席の女子が、浜田君ぼうっとしちゃって眠いの?なんて聞いてきた。オレはそれに曖昧に笑って首を振った。
悪目立ちしちまったなぁって思って、チラッと泉の方を見た。
ばっかじゃねぇのって顔をした泉がこっちに見ていて、オレはその視線にへらりと笑ってこたえる。
こういうやりとりはささやかだけど、オレにとって大切なコミュニケーション。
だから、オレは間抜けな笑顔を作って泉が振り返るのをずっと待っていたけど・・・泉は前を向いたままぴくりともしなかった。
やっぱ、こっち見てくんねぇか・・・。
諦めて、泉じゃなくって黒板を見ようとするんだけど・・・どうしても視線が泉から外れてくれない。
オレが誰かに怒られたり、ネタにされたりするたびに、泉はいっつもオレのことを見てたのは、ホントなんだぜ。
まぁ・・・夏大会前までの話なんだけどさ。
あらためて、自覚するとずぅんとテンションが下がった。
そう・・・夏の埼玉県大会後からオレは泉に避けられていた。
避けられているっていうと、あからさまに無視されているみたいだけど、そういうわけでもなくて・・・みんなと一緒にいる時はちゃんと一緒にいるし、話もするけど・・・こういうやりとりがなくなったんだ。
泉はオレを見なくなった。
泉はオレに軽口を叩かなくなった。
泉はオレと小突きあいをしなくなった。
泉はオレと・・・。


PREVIEW END

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