ぐわぁしぃ!!ぐわぁしぃ!!
「「ぎゃっ!」」
頭をつかまれてオレたちは2人で揃って悲鳴を上げた。
「い、痛ぇ〜!」
水谷の絶叫が青空に木霊した。
FACE A DENGER 4
ギリギリギリギリ・・・って、マジ痛いから!
「水谷君、栄口君・・・そんなに見詰め合っちゃってどうしたのー?」
モモカンの声が、まるでハリセンボンみたいだ。
「ん〜!?2人してみつめあっちゃって、青春でもはじまっちゃったのかな?」
「「ゴメンナサイ!」」
「あなた達、瞑想もちゃんとやってなかったね?」
「「ゴメンナサイ!!」」
2人して必死で謝ると、モモカンは握っていた頭をようやく離してくれた。
つ、潰されるかと思った・・・。
「2人とも、ちゃんとやっていなかった罰としてやってもらう仕事があるからね。覚悟しておいて頂戴ね」
にっこりと笑われて、オレたちがハイッと返事をするとモモカンは「ヨシ」を出したので、柔軟を開始しているみんなの方へ走っていった。
走りながら、横目で水谷を見ると・・・ばっちり目があっちゃって。
綺麗な顔がえへへ、怒られちゃったねとふにゃりと笑った。
ズキン!って胸が痛くなって・・・。
もう、やだ。なんなんだよ、ホント。こんなふにゃふにゃした顔でもいいわけ?ドキドキしちゃうわけ、オレ!?
勘弁してくれ〜。
今まで、オレの中にあったお約束や暗い気持ち・・・そういったしがらみみたいなものを水谷の笑顔はいとも簡単にひょいっと飛び越えてしまう。
隣の席の女子の事だって、伝えたいのに・・・伝えそびれてしまった。言わなきゃ 言わなきゃって思うんだけど・・・水谷の笑った顔見ると『ズキドキ!』ってなって、そういうもやもやしたものが吹っ飛んでしまう。後ろ暗さが消し飛んで・・・ま、いっか。今度でいいやって、なってしまうんだ。
今までだったら、考えられなかったんだけどな・・・。
オレがオレでなくなってしまいそう。
良いんだか、悪いんだか考えあぐねて・・・『そんなに真剣に考えなくてもいいや。ただ単純に、水谷の笑顔が好きってだけなんだ』って思って一人で苦笑いしてしまった。すっごい、平和的で簡単なところに落ち着いちゃったな。
みんなと合流して、柔軟を始めながらそんなことを考えていると、背中をぐっと強めに押された。
「栄口ー、ナニ笑ってんの?」
水谷の声が頭上からふってくる。声が笑ってるからオレは顔を上げずに『なんでもないよ』と答えた。
えー、なになに?思い出し笑い?栄口ってばえろい!とか言われたけど、ぐっと我慢。
顔は上げない、振り向かない。
だって、すっごく危険だ・・・。水谷の笑顔って、かなりアブナイんだ。
やっと、落ち着いた心に波風立てたくない。だって、モモカンに1日に2度も握られるのは、ホント御免だからさ。
END
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