Selfish February 3
バスルームを出て、部屋に戻ると和さんがベッドに腰掛けてテレビを見ていた。少し上半身を前傾させ、軽く膝を開いて座る膝にほ頬杖つくのも、球場のベンチに座って試合を見る姿とそっくり同じだった。
オレはそれを隣から見るのが好きだった。
「和さん、何見てるンすか?」
和さんの横に腰を下ろしながら、聞くと春の選抜がニュースのトピックになってたんだと言った。
「選抜、なつかしいっすね・・・」
言うと、和さんは苦笑した。
まだ、笑い飛ばすのには時間が要るのかもしれない。
オレたちは、いろいろあった。辛いことも、間違えも、すれ違いも、できることなら、時間を巻き戻してやり直したいことも、いろいろあった。
それでも、オレは和さんと一緒に居る。
和さんが、好きだ。
オレが、伸び上がって和さんの唇にそっとキスをした。
こんな、ちゃちなキスでも超緊張する。なんかいしても、すげぇ心臓がどきどきする。こんな、他愛ないキスができるようになるまで、何年もかかった。
オレが和さんの頭を引き寄せ、閉じている唇と唇の狭間を舌でなぞると、キツク閉じられていた唇が、花が綻ぶように開く。
「ん・・・」
和さんが、鼻にかかった声を洩らした。ぞくぞくする。
和さんの唇の狭間から舌を滑り込ませるころになると、オレはたまらなく興奮して、まるで犬みたいに和さんの口の中をべろべろと嘗め回す。
キスだけは、いつもオレからする。
和さんの身体が、ゆっくりと傾いでベッドに沈む。オレも、一緒に沈む。
唇を離すと、少し呼吸が荒くなっていた。
和さんが、いつもみたいにオレのバスローブの紐を解こうとしたから、その手を慌てて押さえた。
「準太?」
不思議そうな目で見られて、オレは今だ!今しかない!と思った。
「和さん。オレ、いっつも和さんにいろいろしてもらうじゃねぇですか」
「厭だったか・・・?」
「いえ!違うンすよ!舐めてもらうのとかすんげぇ気持ちいいしって、そうじゃなくってですね、オレにさせて欲しいンすよ!」
「オレは、準太が快くなってくれればそれでいいんだ」
和さんはそう言って、首をふった。
「そんな・・・!オレにも、和さんを触らせてください。あの、それがオレの誕生日プレゼントってことで・・・」
どうっすか?
思い切って聞くと、和さんは絶句していた。思いも寄らない、プレゼントをねだられたって思ってるのかもしれない。
「オレ、今それが一番欲しいものっつーか、させてもらいたいことなンすよ」
・・・END?
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