「えっ?」
どきんとした。水谷は、オレの心の中が読めるのか!?
「やっぱり・・・」
水谷が反応にしゅんとうな垂れたから、焦ってしまった。な、なんか、気に触るようなことしたか、オレ!?
「な、なんで?なんで、水谷がそんな顔するの?」
「だって、栄口・・・オレのことさっき睨んでなかった?オレの気のせいかな?」
FACE A DENGER 3
に、睨っ・・・!
正直、これ相当ショックだった・・・。オレは、水谷の横顔が綺麗だなって見惚れてただけだったのに・・・水谷は睨まれたと思ったんだ。
オレは、目つき悪いから・・・薮睨みしてるみたいに見えるけど、そんなことしてないよ。水谷を睨むわけないじゃないか。
「オレ、栄口になんかしたかな・・・」
さっきの水谷の言葉に、落ち込んでしまったけど・・・目の前の水谷は泣き出しそうな顔をしてるから、オレは明るく笑って見せた。
「ホント、なんでもないんだ。さっき見てたのは水谷、睫毛長いんだなって思っただけだから。瞑想中だから、ちょっとしか見てなかったし。水谷、自意識過剰だよ?」
最後の一言の一言を冗談めかして言うと、水谷はなんだよーっと言って胸をなでおろしていた。その気の抜けっぷりと言ったら・・・ホントに心配してたんだな。
「自意識過剰ってなんだよー。オレ、そんなにナルじゃないよー」
「あはは。でも、ホントに水谷は綺麗な顔してるよね。カッコイイって・・・」
うちのクラスの女子が言ってたよ、と言おうとして言葉が詰まった。
あ、れ・・・?
のどの調子が、おかしいのかな?言葉が、出て・・・こ、ない?
言ってあげなくちゃ、クラスの女子で可愛い子が、水谷のことカッコイイって言ってたよって。伝えてあげなきゃ・・・。
なんか、つっかえてる。咽喉の奥に、もやっとしたものが。
それが、言葉をせき止めてる。
「え〜!?ヤダ、栄口やめてよ!」
顔を真っ赤にした水谷にばんばんと、背中を叩かれてオレの口からぽんと声が出た。
「へ?」
やめてよって、なに?
「そんな、綺麗とかカッコイーとか・・・栄口に言われるとオレ照れちゃうじゃん!」
「あ・・・!」
ヘンなところで声が出なくなっちゃったから、オレが『綺麗とかカッコイイとか』言ったことになっちゃったんだ!
オレも水谷を綺麗だともカッコイーとも思ったから、嘘にはならないけどさ・・・。
「だって、水谷の顔は綺麗だし、カッコイイよ」
「あーもー!栄口って良いヤツだなぁ!」
水谷の笑顔に気持ちが重くなった。
・・・褒められるとさらに、うしろめたい。
「そういう栄口のチャームポイントはぁ・・・えっとねぇ・・・」
水谷は、そんなことを言いながらオレの顔を見る。
「え?いいから!褒め返さなくていいから!どっかの、誰かみたいなことしなくていいから!」
必死に訴えるんだけど、全然聞いてない。じぃっとオレの顔を見つめてくるから、堪んない・・・。
なんか、喋ってよ。いつもみたいに、気の抜ける馬鹿なこと言ってよ。綺麗なその顔で、見つめないで・・・。
気まずいと思うのはオレだけなのか・・・水谷はピクリとも動かないでまだオレの顔を見てるよ。
恥ずかしい、うしろめたい・・・でも・・・なんだろう?照れる?
そんなことを考えていたら、何を思ったのか水谷が顔をずいっと突き出してきた。
あっという間に、オレと水谷の顔と顔の距離が縮まってしまった。
至近距離に水谷の、綺麗な顔。
透度の高い鳶色の瞳に、オレの顔が映っていてどきんと胸が大きく鼓動した。
どきどきする心臓の音を聞きながら、『あ・・・』と思った。
照れるとか、恥ずかしいとか、うしろめいたとか・・・そういうの全部感じてるんだろうけど、それ以上に・・・。
もしかしたら、これって・・・嬉しいの、か〜?
えぇ!?なんだそれ!?見られて嬉しいって、ちょっとヤバイんじゃない!?
って、パニック起こしそうになたところに、ぬっと手が伸びてきて・・・。
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