高校二年生のオレの誕生日は、去年よりももっとオレにとってどうでもいい日だった。
去年は今日よりもむしろ、明日と明後日の方がずっと大事で・・・それは今年も変わんないけど。
去年と今年とじゃ、全然違う。
去年、部内には真ん中誕生日っていうのがあって・・・部のみんなが９月１９日生まれのオレと２１日生まれの慎吾さんの誕生日を２０日にまとめて一緒に祝ってくれた。
でも、今年は慎吾さんはいない。
Ｆａｎｆａｒｅ １
部の誰かが、慎吾さんと迅の二人で個人的にやらないの？って聞いてきたけど・・・やるわけない。というか、やれるわけがない。
利央とも、今はちょっと顔が合わせずらい。お互い休まずに部活に出て、練習をこなして、秋の県大会で試合をして勝ち上がっていくのでやっとだった。
１９日の夜８時半。
部活の帰り道。オレはもう、すっかり涼しくなった夜道を歩いている。舗装されていない道路だから、あちこちに草が茂っている。リリリ・・・なんて啼いている虫の声が聞こえてきた。
そういえば、去年のオレの誕生日は慎吾さんから電話が掛かってきて・・・びっくりしたり嬉しかったりで風呂でおぼれかけてたっけな、なんて思いながら思い出し笑いをしたら思わず目頭が熱くなって慌てた。
ヤマさんからのプレゼントは、オレの手帳の中に挟まっている。けど、ここのところずっとそれを見てない。
慎吾さんも、利央も、ヤマさんも、和さんも、準さんも・・・去年はみんないた。
誕生日祝いにって慎吾さんがオレをナイターに連れて行ってくれたことが、今じゃ夢のように遠い。
あの頃はすげぇ幸せだったんだなぁ。わかってたけど、今更ながらにそう思うよ。
１６歳のオレは慎吾さんが大好きだった。バカみたいに風呂場で叫ぶほど好きだったけど。
１７歳ののオレは、慎吾が好きで・・・でも、もうそれを声に出して叫ぶことなんか出来なかった。
ヤだな・・・去年のことを思い出してたらマジで鼻水が出てきそうだ。
オレがすんと鼻を鳴らし、鞄から絶対鞄からポケットティッシュなんか出さねぇぞって思っていたら。
ポケットの中からファンファーレが鳴った。
試合の時にヒットを打つと、スタンドでブラバンが演奏してくれるアレだ。
「うわ！」
場の雰囲気にあまりにそぐわない音にびっくりしたけど、一瞬後にはそれどころじゃなかった。
ファンファーレの音はオレの携帯の着信音なんだ。誰かから電話が掛かってきてるってことだ・・・！
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