Selfish February 1 



高校三年生の二月にもなると、もう進路決まってれば楽勝って感じだ。それでもって、二年生からエースを張っていたオレはその功績が認められてか、一般受験じゃ受かるか心配だったからかわかんねぇけど監督が推薦で大学に捩じ込んでくれた。クソッタコとか言われたけど、感謝してる。 
だから残りの高校生活は遊んで暮らせる。残るは期末考査だけって考えるとスゲェ楽。とにかく赤点さえ取らなければどうにかなる。
大学へ行っても、野球は続けるつもりだから体がなまらないように適当にトレーニングもしている。肩をなまらせると、ろくなこねぇから。
でも、勿論タケじゃあるまいし、ほぼ毎日、自主的に部活に参加したり、自主練ばっかりしてるわけじゃない。
今年の二月はっつーか、二月二日はやることがあるんだっつーの。豆まきの準備じゃなくて、むしろ二月二日のために下準備を一月下旬からこつこつとやった。タケは無駄な情熱だけはあるとか失礼なこと言うけど、無駄じゃネェよ、無駄じゃ!
因みに、この二月二日と言うのはオレの誕生日だ。彼女っつーか彼氏っつーか、まぁ彼氏彼女じゃなくても好きな人が居るなら、健全な高校男子たるものその人と一緒に過ごした言って思うのが普通じゃね?あ、二人きりね、二人きり。その他はいらない。慎吾さんとか、ヤマさんとか、モトさんとか、利央とか、マジいらない。
で、オレは夢を実現させるべく先月の末から、和さんにアプローチをしようと虎視眈々と狙っていた。
いきごんたのも束の間。
果報は寝て待てって誰が言ったんだ?オレは別に横になってだらけてたわけじゃないんだけど、まぁ果報ってのが向こうからやってきてくれたわけなだ。
 和さんから電話が来て、
「準太、誕生日プレゼントなんだが何がいい?」
 と聞いてきてくれた。
 いつものことと言えばそうなんだけど、オレにとっては「チャ〜ンス!」って感じだった。気分は満塁。一打で二点はかたいってくらいチャンス。
 だから、遠慮なくお願いした。
「誕生日プレゼント・・・欲しいものがあるンすけど」
「おー。何でもいいぞ。大学の合格祝いも兼ねて、奮発するぞ」
「金がかかるもんじゃないいンすけどね」
「じゃあ、なんなんだ?」
 やっぱ、和さんはなんにもわかってない。もっとモーションをかけなければ!
「和さん、その日は二人で過ごしてくれるんすか・・・?」
「え?あぁ・・・みんな一緒の方が楽しくないか?それに、みんなも準太の誕生日を祝いたいだろうし」
「あー、それはそれなんすけど。その後とか・・・」
「あー・・・」
 和さんが一瞬言いよどんだけど、オレは頑張った。
「誕生日プレゼント、ひとつお願いがあるンす。それ以外ならオレはいらねっすよ」
 オレは積極的な自分に少しびっくりした。部活を引退してから能天気になったとタケに言われたが、本当緒なのかもしれない。昔なら、怖くて言い出せなかった。
「和さん・・・頼ンます」
 オレは電話越しに頭を下げると、気持ちが伝わったのか和さんが、
「わかった。オレに出来ることなら」
 って言ってくれた。
「あーざす!」
 そう言って、その日は電話を切った。
 オレは携帯のオンフックのボタンを押した途端。
「らぁ!!」
 ベッドの上に仁王立ちになり、ガッツポーズで勝利の雄叫びを上げた。
 途端に、隣の部屋から『にいちゃん、うーるーさーいー!』という苦情が飛んできた。
 でも、そんなもん耳に入らないほどオレは浮かれていた。

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